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大阪高等裁判所 昭和59年(ラ)336号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

抗告人は、生命保険外交員の必要経費として毎月の収入額の四四パーセントは差押えから除外されるべきである、と主張する。

しかし記録によれば、抗告人は、肩書住所地に昭和五二年一〇月二九日取得した宅地89.26平方メートルとその地上に同年八月三一日新築された木造瓦葺二階建居宅一階35.60平方メートル二階32.29平方メートルを所有し、家族構成は、抗告人のほか妻(三五歳、無職)、長男(九歳、小学三年生)、長女(七歳、小学一年生)の四人であつて、勤務先である第一生命保険相互会社から生命保険外交員として支払を受けている金額は、昭和五八年分が八一四万六二二四円、昭和五九年一月分から七月分までの合計が七四八万五八〇六円(いずれも名目額(収入金額)で、所得税、住民税(五九年度)、社会保険料を差し引いた残額は、前者が七一三万八八四八円(月額五九万四九〇四円)であり、後者が六三〇万五七五〇円(月額九〇万〇八二一円)である。なお、勤務先の明細書では「給与」、支払調書では「外交員報酬」となつているが、所得税・住民税関係では税務処理上「事業所得」となつている。)であること、昭和五九年七月一八日になされた本件差押命令(ただし、同命令には第三債務者の表示はないが添付の当事者目録中第一生命保険相互会社を第三債務者と表示すべきものであり、同添付の差押債権目録記載(1)中「債権者」は「債務者」の、「毎日」は「毎月」の、「金二八万円以上超える場合」は「金二八万円を超える場合」の、それぞれ明白な誤記と認められ、「給与所得税」は「事業所得税」とすべきものである。)は、相手方の抗告人に対する二八四万四四一八円の債権の弁済に充てるため、抗告人が第三債務者から支給される毎月の給料(基本給、諸手当、ただし通勤手当は除く。)及び各期の賞与から、所得税、住民税、社会保険料等法定控除額を差し引いた残額が、二八万円以下の場合はその四分の一、二八万円を超える場合は二一万円を差し引いた残額で、命令送達時に支払期にある分以降右債権額に満つるまでの部分を差し押さえることをその内容とするものであること、がそれぞれ認められる。

そして、民事執行法一五二条に定められた債権以外の債権については、原則として差押禁止部分はないこと(抗告人の場合も標準的必要生計費をあらかじめ被差押債権から控除するという法定の特別措置をすでに受けているわけである。)、右条項に定められた債権を含め債権全般について、債権取得のための必要経費を控除する措置は一般にとられていないこと、抗告人の場合家族構成の点では標準的な世帯とみることができること、税務処理上生命保険外交員の収入は事業所得となり、実務上四四パーセントの必要経費の控除が認められているとしても、経費節減の可能性もあり抗告人の収人額自体が高額であること、をそれぞれ考慮すれば抗告人の前記主張は採用し難いものである。

次に抗告人は、住宅ローンや他の金融機関へ毎月行つている弁済額を差押えから除外すべきであり、本件差押命令が執行されると抗告人が回復すること能わざる窮迫の状態に陥いることが明らかである、と主張する。

しかし、一般に債権の差押えに当たり、預貯金、投資、財産購入、借金返済など資産の増加あるいは負債の減少に要する支出を除外することはないのであつて(消費支出(いわゆる生活費)は民事執行法一五二条により差押禁止債権として考慮されている。)、債務名義を有する複数の債権者間においても平等主義の原則が働くにもかかわらず、抗告人の主張するような取扱いをすれば、むしろ債務名義を有しない債権者を優先させる結果を是認することとなり、右主張はとうてい採用できるものではない。そして、抗告人の主張を採用しないことにより抗告人が回復不能の窮迫状態に陥ることは、本件記録上これを認めることができない。

そのほか抗告理由に即して記録を検討しても、本件差押命令の一部を取り消すのが相当であるとは認められない。

(村上明雄 堀口武彦 安倍嘉人)

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